インタビュー

【JODAN. people interview】 アロマとあの人 Vol.2/ 服部あさ美さん

ご縁のあった素敵な人たちからアロマにまつわるお話を伺っていくインタビュー。

第2回目は、雑誌「& premium」や「DEAN & DELUCA」などでご活躍中のイラストレーター・服部あさ美さんにお話を伺いました。

無印良品のエッセンシャルオイルシリーズの植物のイラストをはじめ、ご著書「ハーブカタログ」「フレングラントフラワーカタログ」を上梓されるほどに、昔から植物を描くことに関心を持っていたという服部さん。

コロナ渦以前から自宅に篭ってお仕事される中でアロマを1日の中で時間割のように活用されてきたそう。

植物や香りにまつわるエピソードをたくさん教えてくださいました。

森の中で時折みかける現象「クラウン・シャイネス」のことなども。

【JODAN. people interview】 アロマとあの人 Vol.2/ 服部あさ美さん

植物に慣れ親しんだ服部あさ美さんの原風景

『服部さんには、JODAN.(ジョダン)のinstagramでも
精油の原料植物のイラストを描いて頂いていて、いつもお世話になってます!

無印のアロマオイルのイラストなど、
植物のイラストのお仕事が多く見られますが
元々、自然や植物への造形にご興味があったのですか?』
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一番古い植物の記憶は祖母が植物をよく描いていたことです。

祖母が庭でたくさんのハーブや野菜を育てていて、
何種類あるか、一度数えたことがあるのですが
野菜だけでも50種類以上。ハーブの数はそれを遥かに越えていて、もう数えませんでした。

畑を時々手伝ったりしていたので自然と植物の造形は入ってきたと思います。
花よりも緑が青々と広がる景色の印象が残っていて。
確か、祖母の真似をして絵も描いていたような。

学生の頃には、神保町などで古本やレコード、喫茶店巡りにはまって、
その中でも重厚な植物画集に出逢ったことは私に衝撃を与えました。

古い植物画集は、写真の変わりに
緻密で繊細な描写の植物のイラストが使われていて、
制作にかかる時間が尋常ではなく、
1枚仕上げるのに何年も経過していたようです。

そんなカメラのない時代に命をかけてまとめられた、
ピエール=ジョセフ・ルドゥーテの「バラ図譜」や、

同時代の日本だと岩崎灌園(かんえん)の「本草図譜」にも引き込まれましたね。
余白のバランスも計算されたような構図がとてもかっこよくて。

ほかには、イエラマリなどの絵本の植物の描き方などもとても好きでした。

(写真:発色と植物のシルエットの重なりが美しいIERA MARI(イエラ・マリ)の絵本。服部あさ美さん私物)

無印のアロマオイルのイラストがきっかけで…

『ご著書の「フレグラントフラワーカタログ」でも
曾お祖母様が、蚕の繭から紡いだ絹を草木染めで染めるために、
お庭の植物を原料とされていたと書かれてましたね。

その草木染めされた絹を使って着物をつくられていたとか。

服部さんがほんとうに素敵な家系の元でお育ちになったのが納得です!

「ハーブカタログ」と「フレグラントフラワーカタログ」が
出版されるまでの経緯を教えてください。』
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始まりは、無印良品のエッセンシャルオイルシリーズのカタログで
私の植物のイラストを見た編集の方が気に入ってくださって、
何か植物の絵で本を作りましょう、とご提案いただいたのがきっかけでした。

(写真:当時の無印良品のエッセンシャルオイルカタログ。クライアントごとに、同じ植物でもイラストのタッチを変えているそう。)

(写真:見ているだけでも無印のアロマオイルに癒されているような感覚になるイラストたち)
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ご著書「ハーブカタログ」&「フレグラントフラワーカタログ」

どうせなら、子供も大人も楽しめて、
古代ギリシャの薬物誌みたいに役に立つものがいいなぁと思っていました。

既存の類似本は、写真ばかりで、掲載されている植物の種類も多かったので、

それとは一味違った、ハーブや花の世界に気軽に興味を持てる
きっかけとなるような本を目指すために、

専門家の方に50種類に厳選していただき、
それに合わせた絵を描いてカタログにしようと。
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『私、フレグラントフラワーカタログの方を購入して読ませていただいたんですが
香りのある花の種類を厳選してまとめてあるので、
どれも実際に庭に植えたら香りも楽しめるんだと想像すると、
はやく庭で育ててたのしみたいと、
わくわくが倍増しました^^
洒落た洋冊子のような佇まいで、文字数も多くないから気楽に読めるし
ちょっとしたギフトにもよさそうですね。

服部さんには及びませんが...
植物をじっくり観て描いてみたいという欲求も出てきたんですが、

服部さんが普段から植物のイラストを多く描く中で、
植物の容姿などから感じることがあれば教えてください。』
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緑色の多さを特に感じます。

描くために、お花屋さんで葉っぱものばかり買って
部屋のあちこちに置いて観察するのですが、
どんな植物も光合成のためにうねうねと葉を動かして
光を浴びようとする様子は、毎日変化があって美しいです。

緑色も場所の光合成によって薄くなったり濃くなったり。
童心に戻り、単純なことに対して「なぜ?」って
疑問に感じるのがとても楽しいです。

香りとクラウンシャイネスは植物の言葉

『植物がからだ全体を使って自分に必要なものを取り込んで
成長、表現する様子には見習う部分が多くありますよね。

「フレグラントフラワーカタログ」の巻末で
服部さんお気に入りのフレグランスミストのアロマの調合をされた方が
寄せられていた一文
“人間には言葉があり会話をして互いを理解し合うが、
言葉を持たない植物にとって、香りこそが言葉である” という言葉にも
とても共感しているのですが、
服部さんも同じことを思われますか?』
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はい、私もとても共感します。

香りだけでなく生きようとした結果、
色や形を変化させていく姿にも。

森の中で時折見かける、「クラウン・シャイネス」という
現象を見つけると言葉のようなものを感じます。
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『「クラウン・シャイネス」って言葉、はじめて聞きました。
どんな現象ですか?』
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樹々が成長していく過程で太陽を譲り合ったり、
隣の葉に触れないようにするとても神秘的な現象です。

公園の木の下でごろんと横になって上を見上げていたら
木の葉とその隣に立っている木の葉が重なり合わずに
それぞれの木の葉の間に空が細く抜けていて
それがちょうど1本の道筋のように見えるのを発見して。

葉と葉は重なるイメージしか持っていなかったので
これはどういう現象なのだろうと調べてみたとき
私も初めて知りました。

まだはっきりとは解明されていないそうなんですが、
他の木と距離を保つなんてソーシャルディスタンスみたいですね。
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『譲り合いのソーシャルディスタンス…、
そんな生き方を世界中の人が自然にできるようになれたら
世界が平和になりそう…!
ほんとうに自然には学ぶべきところがいっぱいですね。

公園以外に自然の奥深くへ行くことは多いですか?』
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実はそんなに多くなくて、公園は好きだけど
移動が苦手であまり外に出たくないインドア派。

旅も好きですが一箇所にとどまることが多いです。

服部あさ美さんがアロマにはまっていったきっかけ

『服部さんは、コロナ渦に関わらず
ご自宅に篭って描くお仕事をされているので、
以前から生活の中でアロマの香りが大きな役割を果たしていそうですよね。』
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そうですね。自宅仕事なので、香りはとても気分転換になります。

朝はユーカリですっきりと...
仕事に集中したいときは作業机にアロマストーンで、ミント系、
疲れて元気になりたいときは柑橘系を...
などといった感じで、1日のうちの「時間割」として
気持ちを切り替えるのに香りはとても大切です。

以前、歴史のある古いホテルに行った時に
入り口と館内全体にヒノキのアロマが充満していて、
優雅な気分に満たされた素晴らしい滞在になった体験があって、
それからというもの、そのホテルで味わった優雅な気持ちに浸りたいと
自宅の玄関でもマネしてアロマストーンで同じ香りを使っています。

仕事で、服部みれいさんの事務所に伺った時も、
ウッド系のアロマが室内に充満していて、
「この香り好きです」と話すと、
「今そういう状態なんだね」と言われ、アドバイスをいただいて。
日々の体調の変化にも好みの香りが作用するのだと知り、
その日、そのアロマをみれいさんからいただいて
そこから徐々に精油のことが気になり始めましたね。

トイレの消臭用にはミントやレモングラスを。
特に、AESOP(イソップ)のポスト プー ドロップスという
シトラス系のトイレ用消臭芳香剤が好きです。

リビングでは、ご飯を食べたりお茶を飲んだりするので
無臭にしておきたくてアロマは使いませんが、
友達が来た時だけはアロマを焚いています。

ベッドサイドでもアロマストーンを使って
リラックスのためにラベンダーやヒノキの香りを漂わせています。
乾燥の季節には加湿器付きのもので。

いい匂いに包まれたまま眠りにつくと、
その日あった嫌なことを考えないまま、
いい意味で反省しないで寝れるんです。
無の状態になれるというか。

服部あさ美さんがよく使っているアロマブランド(PRIMAVERA、無印etc...)

(写真:服部さんご愛用のプリマベラと無印のアロマオイル、コスメキッチンHERBORISTERIEのNEW MOON OIL)
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『寝ている時間って潜在意識と繋がりやすいから
幸せな状態で寝ると自然と幸せな現象を引き寄せるって言いますよね。

JODAN.(ジョダン)のお客様からも
「アロマストーンを使い出して、いつもは必ず一度は夜中に起きてしまっていたけど
それがなくなって毎日気持ちよく過ごせています」とご感想をいただいたこともあります。

ちなみに、服部さんがよく使われている精油メーカーはどちらですか?』
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特に限定はしていませんが、無印良品のエッセンシャルオイルは
価格も買いやすいのでよく利用しています。

他には、PRIMAVERA (プリマベラ)などの精油を。

昔、素敵な知人の女性が、夏の夜の遊歩道で、
おもむろに虫除けのためにラベンダー精油を足元に塗り始めて...
その姿に憧れのようなものを感じていました。
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『昔から精油のボトルを持ち歩いて、さりげなく愛用している女性なんて、
当時だったらかっこよくてわたしもきっと衝撃を受けそうです。

近年ではロールオンアロマを持ち歩く人も多いですよね。』
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私も外出するときは、香水代わりにシトラス系のロールオンアロマを持ち歩いています。

それから、先月JODAN.(ジョダン)のアロマリングも購入させていただきましたが
実物もとても素敵で、外出する前から早速アロマをつけてお仕事していました^^

精油をつけて絵を描いていると、筆を動かすたびにふわっと香るのがとても心地よいです。
本当に軽くてつけ心地が良いので、仕事中でも違和感がありませんでした。

セラミックの厚みがかえって指を華奢に見せるのか、
金のワンポイントが効いているのか、自分の欠点をカバーされる印象です。

元々リングをお守り代わりにつけているんですが、
好きな香りを身に纏って、よりお守り感が増しました。

『JODAN.(ジョダン)のアロマリングのご感想までありがとうございます!
素敵な方々がリアルにご購入くださることが本当に何より励みになっています。
ご縁に感謝です^^

服部さんも、表参道のROCKETで働かれていた頃のお付き合いが、
今のお仕事の広がりに繋がっていそうですよね。』
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そうですね、無印のアロマオイルのカタログのデザインは
当時ギャラリーで知り合った元グルビのメンバーでもあるTAKAIYAMA inc.の山野さんですし、

NORTH FACEの山登りノートの植物のイラストを依頼してくれたのも
ROCKET(cap)の元同僚だった((STUDIO))の峯崎ノリテルさんだったり。

その頃のご縁でご依頼いただいていることが多いです。

(写真:服部さんがイラストを描かれたコンパクトなNORTH FACEの山登りノート)

コロナ渦以降の生活の変化

『コロナ渦になって、イラストのお仕事の依頼内容や
私生活において何か変化はありましたか?』
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生活はそれほど変わりませんが、最初の緊急事態宣言下では
撮影自体ができずに写真を使えないので、
代わりにイラストを使いたいという企画が増えて、逆に仕事が忙しくなりました。
打ち合わせはほぼオンラインに。

私的な用でも、会う人が自然と厳選されてきましたね。
人も生活スタイルも何が大切なのか見据えることができるようになってきたような。
情報に惑わされず、同調しすぎずといった感じで。

外出するときには、最近、BULY(ビュリー)のアロマシールも使っています。
より香りを感じたいときにはマスクの内側につけたり。

(写真:マスクの端にアロマシール。BULY(ビュリー)のアロマシールはパッケージもかわいくて、これならバッグの中に入れておいても気分が上がりそう)
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あとは、今まで引きこもってても運動しなかったのが、
周りの友人たちがコロナでリモートワークし出してみんな工夫して運動し始めていて
私もやっと部屋でも筋トレするようになりました。

それから、これはコロナとは関係ないんですが、
最近香木と植物樹脂香にはまっています。

メキシコやアステカ文明の本を読んでいて興味を持ちました。

ホワイトセージは知っていたのですが、香木や樹脂はまた歴史も深くロマンがありますね。
古代に思いを馳せて、嫌なことや調子が悪い時に浄化を込めて焚いています。
(写真:服部あさ美さんのInstagramより)
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『パロサントなどの香木や、ベンゾインやフランキンセンスの樹脂香も、
よりプリミティブな感覚で気持ちを落ち着けることができていいですよね。

無駄な時間の使い方が減ったというのは私の周りにも多いです。
共に時間を過ごしたい人との約束が、より特別なものになって
幸せ感が増している気もしています。

今日も服部さんにいろいろとお伺いできてとってもいい時間になりました^^♡
ありがとうございました!!!』

取材後記

コロナ渦前から、数年前より朝10分程度だけイタリア語の勉強もしている、と教えてくれた服部さん。

海外のホテル暮らしに憧れていた頃、イタリアの画家、フランチェスコ・クレメンテが好きだった影響もありイタリア・ローマにビザの期間3ヶ月ギリギリまで滞在したことがあるそう。

その後、お母さまを海外へ連れていきたいとの思いから、ちょうど、スイス・チューリッヒにある出版社 Nieves books でのグループ展に参加された際に、

滞在経験のあるローマ〜チューリッヒまで寝台列車で旅をし、帰国後にお母様がイタリア語に興味を持たれて一緒に勉強するようになったのが始まりなんだとか。

毎年、板橋区で開催されているイタリア語の翻訳コンテストに親子で密かに応募しているとのこと(同翻訳コンテストの英語版にも!)。

在宅時間の増える中、そんな挑戦を試みるのもいい時間だなぁと思いました。

いつの日か服部さんが翻訳されたイタリア語の絵本を手にすることができるかも?!

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取材場所:
coffee shop 「STILL PARK」
東京都世田谷区玉川田園調布2-8-1
KEYAKI GARDEN 1F
Tel: 03-6715-6322